MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)は、肝臓に脂肪がたまり、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの代謝異常を背景とする脂肪性肝疾患です。
以前は、同じような病態を「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」と呼んでいました。現在は、飲酒量だけで分類するのではなく、脂肪肝の背景にある代謝異常を重視するMASLDという名称が使われています。
MASLDは、単にNAFLDの名前を変えただけではありません。
脂肪肝を肝臓だけの問題として捉えるのではなく、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などと深く関係する、全身の代謝異常の一部として診る考え方がより明確になりました。
現在の国際的な分類では、MASLDは肝臓への脂肪蓄積に加え、心血管代謝リスク因子を少なくとも一つ有する病態として定義されています。(AASLD)
「以前、NAFLDと言われました。病気が変わったのでしょうか?」
病気そのものが、突然別の病気へ変わったわけではありません。
研究が進み、脂肪肝の背景にある体重、血糖、血圧、脂質などの代謝異常を診断の中でより明確に位置付けるようになった結果、NAFLDからMASLDへ名称と分類が見直されました。
そのため、以前にNAFLDと診断された方の多くは、現在の分類ではMASLDとして説明されます。
また、NAFLDの中で、肝臓に炎症や肝細胞傷害を伴う状態を以前はNASHと呼んでいました。
現在は、MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)という名称が用いられています。(AASLD)
| 項目 | 旧名称:NAFLD | 現在の名称:MASLD |
|---|---|---|
| 日本語名 | 非アルコール性脂肪性肝疾患 | 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患 |
| 病気の捉え方 | 多量飲酒がない脂肪肝として分類 | 脂肪肝と代謝異常との関係を重視 |
| 主に確認する背景 | 飲酒量、肥満、糖尿病など | 体重、血糖、血圧、脂質などの心血管代謝リスク |
| 炎症を伴う病態 | NASH | MASH |
| 診療で重視すること | 肝臓の状態と生活習慣病 | 肝線維化と全身の代謝・心血管リスク |
NAFLDの時代にも、肥満や糖尿病との関係は以前から知られていました。
MASLDという名称になったことで、代謝異常との関係が診断概念の中心に置かれたと考えると分かりやすいでしょう。
肝臓専門医が向き合う病気も変わってきました
私が医師になった頃、肝臓専門医が診療する病気の中心には、C型肝炎やB型肝炎がありました。
当時のC型肝炎治療はインターフェロンが中心でした。治療による身体的負担が大きく、十分な効果を得られない患者さんも少なくありませんでした。
治療前に肝生検を行い、肝臓の組織を顕微鏡で確認することも珍しくありませんでした。
カンファレンスでは、肝臓のどこに炎症が起き、線維化がどこまで進んでいるのかを病理標本から考えることを繰り返し教え込まれました。
その後、C型肝炎の治療は大きく進歩しました。
現在では、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の登場により、多くの患者さんが8〜12週間程度の内服治療でウイルス排除を目指せるようになっています。
B型肝炎についても、核酸アナログ製剤などの抗ウイルス薬が進歩し、ウイルスの増殖を長期間抑え、肝炎や肝硬変への進行を防ぐ治療が可能になりました。
こうした治療の進歩により、ウイルス性肝炎から肝硬変や肝細胞がんへ進行する患者さんは、以前に比べて大きく減っています。
ただし、C型肝炎でウイルスが排除された後も、肝線維化の程度によっては肝細胞がんの定期的な経過観察を続ける必要があります。
そして現在、肝臓専門医が日常診療で向き合う機会が増えている病気の一つが、肥満や糖尿病などを背景とするMASLDです。
私自身も、長く肝臓診療に携わる中で、肝臓専門医が向き合う病気が、ウイルス性肝炎中心の時代から、脂肪肝と生活習慣病を一緒に診る時代へ変わってきたことを強く感じています。
私たちがMASLD診療で大切にしていること
私が病名の変更以上に重要だと考えているのは、脂肪肝を肝臓だけの病気として考えないことです。
脂肪肝の患者さんを診察するとき、肝機能の数値だけを見るのではなく、次の点を一緒に確認します。
- なぜ脂肪肝になったのか
- 糖尿病、高血圧、脂質異常症を合併していないか
- 肝臓が少しずつ硬くなる「肝線維化」が進んでいないか
- 将来の心筋梗塞や脳卒中につながるリスクが高くないか
- 現在の生活の中で、何なら無理なく改善できるか
脂肪肝だからといって、すべての方に詳しい検査や薬物治療が必要なわけではありません。
一方で、「よくある脂肪肝だから」と長期間そのままにしてよい方ばかりでもありません。
大切なのは、現在の肝臓の状態と将来のリスクを一度整理し、その方に必要な検査や治療の程度を見極めることです。
MASLDという病名は新しくなりましたが、患者さんを大切に診るという姿勢は変わりません。
肝臓だけを見るのではなく、その方の生活や背景、将来の健康まで見据えて診療することが、これからの脂肪肝診療で最も大切だと考えています。
MASLDになりやすい人には、共通する代謝リスクがあります
健康診断で脂肪肝や肝機能異常を指摘された方にとって、MASLDは決して珍しい病気ではありません。
MASLDの背景には、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの代謝異常があることが多く、これらは互いに影響し合っています。
MASLDは、「生活習慣病が肝臓に現れた状態」と考えると理解しやすい病気です。
私が外来でよくお会いするのは、このような方です。
- 健康診断で初めて「脂肪肝ですね」と言われた
- 「肝機能が少し高いですね」と毎年言われているが、自覚症状はない
- 学生時代は運動していたが、社会人になって運動する機会が減った
- 就職や結婚など、生活環境の変化をきっかけに体重が増えてきた
- お酒はそれほど飲まないのに脂肪肝と言われた
- 糖尿病、高血圧、脂質異常症で治療を受けている
- 仕事が忙しく、運動する時間をなかなか確保できない
私の印象では、「昔から太っていた」という方よりも、社会人になってから少しずつ体重が増えてきたという方が多いように感じます。
診察室では、
- 「学生の頃は部活動で毎日運動していました」
- 「仕事が忙しくなって運動しなくなりました」
- 「結婚してから少しずつ体重が増えました」
というお話をよく伺います。
MASLDは、こうした生活の変化が何年も積み重なって現れてくる病気です。
MASLDを放置するとどうなるのか
MASLDと診断されたからといって、すべての方が肝硬変や肝細胞がんへ進行するわけではありません。
一方で、何年も放置することで肝臓の傷みが少しずつ進み、10年、20年という長い年月をかけて肝硬変へ移行する方がいることも事実です。
そのため、健康診断で脂肪肝を指摘された時点を、「病気が見つかったタイミング」ではなく、「将来の健康を守るためのスタートライン」と考えます。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。
多少傷んでも働き続けられる力が強く、再生能力にも優れた臓器です。そのため、初期のMASLDでは自覚症状がほとんどありません。
逆に言えば、症状がないために気付かないうちに、少しずつ病気が進行していることがあるのです。
私が心配しているのは「脂肪」ではなく「肝線維化」です
私が外来で気にしているのは、「肝臓に脂肪がどれくらいあるか」だけではありません。
本当に心配しているのは、慢性的な炎症によって肝臓が少しずつ硬くなる「肝線維化」が始まっていないかということです。
脂肪そのものは、体重減少や生活習慣の改善によって減ることが期待できます。
一方で、線維化が進行すると元の状態へ戻りにくくなり、さらに進行すると肝硬変や肝細胞がんにつながる可能性が高くなります。
そのため当院では、血液検査や腹部超音波検査などを組み合わせながら、現在の肝臓の状態を総合的に評価しています。
MASLDで最も重要なのは、肝臓だけではありません
MASLDという名称に変わった理由の一つは、脂肪肝の患者さんでは肝臓だけではなく、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患が健康に大きく影響することが分かってきたからです。
肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症は、それぞれ別々の病気ではありません。
互いに影響し合いながら、肝臓だけでなく全身の血管にも負担をかけています。
そのため現在では、MASLDは「肝臓の病気」であると同時に、「全身の代謝異常を表す病気」と考えられています。
私が診療で一緒に確認していること
脂肪肝の患者さんを診察するとき、私は肝機能の数値だけを見て終わることはありません。
一緒に確認しているのは、例えば次のようなことです。
- 糖尿病はありませんか。
- 血圧は高くありませんか。
- コレステロールや中性脂肪はどうでしょうか。
- 体重はここ数年で変化していませんか。
こうしたことを一緒に確認するのは、肝臓だけでなく、患者さんの10年後、20年後の健康まで考えるからです。
脂肪肝は、「肝臓だけの病気」ではありません。
生活習慣病を一緒に診ることで、将来の肝疾患だけでなく、心筋梗塞や脳卒中などのリスクも含めて健康を守ることが重要なのです。
放置するより、「今」生活を見直すことが大切です
MASLDは、早い段階で生活習慣を見直すことで改善が期待できる病気です。
もちろん、短期間で大きく体重を減らす必要はありません。
大切なのは、その方の生活に合わせて、無理なく続けられる方法を一緒に考えることです。
健康診断で脂肪肝を指摘されたときは、「症状がないから大丈夫」と考えるのではなく、「今ならまだ改善できる時期」と前向きに受け止めていただきたいと思います。
どのような検査を行うのか
まず大切なのは、「本当にMASLDなのか」を確認することです
健康診断で「脂肪肝ですね」と言われた場合でも、私は最初から「MASLDですね」と決めつけることはありません。
肝機能障害には、脂肪肝以外にもさまざまな原因があります。
例えば、
- B型肝炎
- C型肝炎
- 自己免疫性肝炎(AIH)
- 原発性胆汁性胆管炎(PBC)
- 胆道系疾患(PSCやIgG4関連硬化性胆管炎など)
まずは肝臓専門医として、こうした病気が隠れていないかを確認します。
そのうえで、他の原因が否定され、肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症などの代謝異常が背景にあると判断した場合に、MASLDとして診療を進めていきます。
MASLDは、「脂肪肝があるから診断する病気」ではありません。
肝臓全体の状態と生活習慣病を総合的に評価して診断する病気なのです。
血液検査では、「数字」ではなく「肝臓の状態」を見ています
健康診断では、
「ASTが高いですね。」
「ALTが高いですね。」
と言われることが多いと思います。
しかし、私が見ているのは、それぞれの数値だけではありません。
例えば、
- ASTとALTのどちらが主体となって上昇しているのか
- γ-GTPは一緒に上昇しているのか
- ALPやビリルビンから胆道系の病気は考えにくいか
- 血小板数は保たれているか
- アルブミンなど、肝臓の働きは十分保たれているか
こうした項目を組み合わせながら、「今、肝臓で何が起きているのか」を考えています。
一つひとつの数字を見るというよりも、検査結果全体から「今、肝臓で何が起きているのか」を頭の中で組み立てながら診療していると言った方が近いかもしれません。
私が最も重視しているのは、「肝線維化」が進んでいないかです
MASLDでは、脂肪があることそのものよりも、慢性的な炎症によって肝臓が少しずつ硬くなる「肝線維化」が進んでいないかを確認することが重要です。
線維化が進行すると、将来的に肝硬変や肝細胞がんにつながる可能性が高くなるためです。
私がレジデント時代を過ごした大阪大学消化器内科教室の関連病院で肝臓診療を学んでいた頃は、C型肝炎に対するインターフェロン治療が中心の時代でした。
当時は治療前に肝生検(肝臓の組織を採取して詳しく調べる検査)を行うことも多く、採取した組織を病理医の先生と一緒に見ながら、新犬山分類を用いて炎症や線維化の程度を評価するカンファレンスが日常的に行われていました。
また、自己免疫性肝炎(AIH)の診療では、病理医の先生と一緒に肝組織を詳しく検討し、AIHなのか、原発性胆汁性胆管炎(PBC)とのオーバーラップ症候群なのかなど、顕微鏡レベルで病態を考える経験を数多く積んできました。
その頃から繰り返し教えられてきたのは、
「検査データだけを見て診断してはいけない」
ということです。
血液検査、画像検査、病理組織、そして患者さんの生活背景まで含めて総合的に考えることが、肝臓診療の基本です。
現在はC型肝炎やB型肝炎の治療が大きく進歩し、肝臓専門医が向き合う病気の中心はMASLDへと変わってきました。
しかし、「肝臓で何が起きているのかを総合的に考える」という診療の基本は、今も変わっていません。
だから私は、MASLDの患者さんでも、「脂肪肝があります」という結果だけを見るのではなく、その背景にある病態や将来のリスクまで含めて診療することを大切にしています。
腹部超音波検査は、MASLD診療の基本となる検査です
当院では、腹部超音波検査を積極的に行っています。
超音波検査では、
- 脂肪肝の程度
- 肝臓の形態
- 肝腫瘍の有無
- 胆のう・胆管・膵臓を含めた腹部全体
を確認できます。
被ばくがなく、繰り返し行えるため、MASLDの経過観察にも適した検査です。
エラストグラフィーなどの追加検査は、本当に必要な方へ行います
当院では、エラストグラフィーによる肝臓の硬さの評価も可能です。
ただし、すべての患者さんに行うわけではありません。
血液検査や腹部超音波検査から得られる情報を総合的に判断し、必要と考えられる場合に追加検査をご提案しています。
CTやMRI、まれに肝生検が必要になることもありますが、多くの方では血液検査と超音波検査で診療方針を立てることができます。
私が診療で最も大切にしていること
検査は、「脂肪肝があります」と診断するために行うものではありません。
私が知りたいのは、
- 肝臓はどのくらい傷んでいるのか
- 将来、肝硬変や肝細胞がんへ進む可能性はあるのか
- 生活習慣病をどこまで改善すれば、そのリスクを減らせるのか
ということです。
一つの検査だけで判断することはありません。
血液検査、腹部超音波検査、生活習慣、既往歴などを総合的に評価し、その方に本当に必要な検査と治療をご提案しています。
検査は病気を見つけるためだけのものではありません。
患者さんが10年後、20年後も元気に過ごせるように、今何をすればよいかを一緒に考えるためのものだと私は考えています。
MASHとは何か ― MASLDとの違いは「炎症」があるかどうかです
MASLDと診断された方が、次によく疑問に思われるのが、「MASHとは何ですか?」ということです。
結論から言えば、MASHは、MASLDの中でも肝臓に炎症や肝細胞の傷害を伴っている状態です。
以前は「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」と呼ばれていましたが、MASLDという新しい診断名への変更に伴い、現在はMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)という名称が用いられています。
つまり、
MASLDという大きな病気の中に、MASHという状態が含まれている
と考えると分かりやすいでしょう。
MASLDだからといって、すべての方がMASHではありません
MASLDと診断された方のすべてに、肝臓の炎症が起きているわけではありません。
肝臓に脂肪がたまっていても、炎症がほとんどなく、肝線維化も進んでいない方は少なくありません。
一方で、慢性的な炎症が続くと、肝臓は少しずつ硬くなり(肝線維化)、さらに進行すると肝硬変や肝細胞がんにつながる可能性があります。
そのため、私たち肝臓専門医が本当に気にしているのは、「脂肪があるかどうか」ではありません。
炎症が続いていないか、そして肝線維化が進んでいないかを確認することが重要です。
MASHかどうかは、血液検査だけでは判断できません
診察室では、
「ALTが高いからMASHですか?」
という質問を受けることがあります。
しかし、血液検査だけでMASHかどうかを正確に判断することはできません。
血液検査や腹部超音波検査、これまでの経過や生活習慣などを総合的に評価し、必要に応じてCTやMRI、肝生検などを組み合わせながら診断していきます。
現在では、患者さんへの負担をできるだけ少なくしながら病状を評価することが基本となっています。
私が診療で最も重視していること
私が診療で大切にしているのは、「MASHという病名を付けること」ではありません。
本当に知りたいのは、
- 肝線維化は進んでいるのか
- 将来、肝硬変や肝細胞がんへ進む可能性はあるのか
- 今の生活習慣を改善することで、そのリスクを減らせるのか
ということです。
そのため私は、MASHという言葉そのものよりも、「肝線維化が進んでいないか」を重視しています。
病名は診断の出発点に過ぎません。
大切なのは、その患者さんの肝臓が現在どのような状態にあり、将来どのようなリスクがあるのかを正しく評価し、一人ひとりに合った治療方針を一緒に考えていくことです。
MASLDの治療 ― 私たちが目指すのは「肝臓だけ」ではなく、その先の健康です
MASLDと診断されても、すぐに薬が必要になる方は多くありません。
現在のMASLD治療で最も重要なのは、脂肪肝ができた背景にある生活習慣や生活習慣病を見直し、将来の病気を予防することです。
その目的は、肝機能の数値を下げることだけではありません。
私たちが目指しているのは、
- 肝線維化の進行を防ぐこと
- 肝硬変や肝細胞がんを予防すること
- 糖尿病、高血圧、脂質異常症を改善すること
- 心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を予防すること
- 10年後、20年後も元気に生活できること
です。
MASLDの治療は、「肝臓の治療」であると同時に、「将来の健康を守る治療」でもあります。
私が最初にお話しするのは、「無理なダイエットは必要ありません」ということです
「脂肪肝ですね。」
そうお伝えすると、
「今日から何も食べない方がいいですか。」
「炭水化物は全部やめた方がいいですか。」
と心配される患者さんが少なくありません。
しかし、そのような極端な方法は長続きしません。
MASLDは数か月でできた病気ではなく、何年、何十年という生活習慣の積み重ねによって起こる病気です。
だからこそ、治療も長く続けられる方法であることが大切です。
体重は「少し減らす」だけでも意味があります
「何kg痩せればいいですか。」
これも外来でよく受ける質問です。
一般的には、
- 体重の3〜5%減少で脂肪肝の改善
- 7〜10%程度の減量で肝臓の炎症や線維化の改善
が期待できるとされています。
つまり、30kg痩せる必要はありません。
現在の体重から、まず5%程度を目標にするだけでも、大きな意味があります。
私は、患者さんと一緒に「次の外来までに何kg減らすか」ではなく、「半年後、一年後も続けられる生活になっているか」を大切にしています。
食事療法で大切なのは、「我慢」ではなく「続けられる工夫」です
私は、「これを食べてはいけません」とお話しすることは、ほとんどありません。
食事は栄養を摂るためだけのものではありません。
家族との食事や、仕事仲間との会食、地域の食文化など、人生を豊かにする大切な時間でもあります。
だから私は、
「何を食べるか」だけではなく、
- 食べる量
- 食べる頻度
- 食べる時間
- 食べ方
を患者さんと一緒に考えるようにしています。
管理栄養士と一緒に考えることが、治療を続ける力になります
食事について、医師が診察室でお話しできる時間には限りがあります。
そのため当院では、必要に応じて管理栄養士による栄養指導をご案内しています。
管理栄養士は、
「これを食べてください。」
と指導するだけではありません。
患者さんの仕事や生活、家族構成や食習慣まで伺いながら、その方が続けられる方法を一緒に考えていきます。
私は、一人で診療するよりも、管理栄養士と一緒に診療した方が、患者さんの生活は変わりやすいと感じています。
医師が病気を診て、管理栄養士が生活を支える。
この両方がそろって初めて、長く続けられる治療になると私は考えています。
運動は、「激しい運動」よりも「続けられる運動」が大切です
診察室では、
「運動しなければいけないのは分かっています。」
という言葉をよく伺います。
学生時代は部活動をしていた方でも、社会人になると仕事や家庭が忙しくなり、運動する時間が取れなくなることは珍しくありません。
だから私は、
「毎日1時間運動してください。」
とはお話ししません。
まずは、
- 一駅分歩く
- エレベーターではなく階段を使う
- 家でできる筋力トレーニングを始める
など、今の生活の中で続けられることから始めることが大切だと考えています。
糖尿病や高血圧も、一緒に治療することが重要です
MASLDでは、肝臓だけを治療しても十分ではありません。
糖尿病、高血圧、脂質異常症などを一緒に改善することで、肝臓への負担も軽くなり、心筋梗塞や脳卒中の予防にもつながります。
そのため当院では、肝機能だけではなく、生活習慣病全体を一緒に診療しています。
飲酒について
「お酒を飲まなければ治りますか。」
という質問もよく受けます。
MASLDは、お酒が主な原因ではない脂肪肝ですが、飲酒は肝臓への負担を増やす可能性があります。
飲酒習慣のある方には、その量や頻度を確認し、一人ひとりに合わせて無理のない減酒をご提案しています。
私が診療で最も大切にしていること
MASLDの治療は、「脂肪肝を治すこと」がゴールではありません。
私が本当に目指しているのは、
- 肝臓を守ること
- 生活習慣病を改善すること
- 心筋梗塞や脳卒中を予防すること
- 10年後、20年後も元気に生活していただくこと
です。
そのため私は、薬だけに頼るのではなく、患者さん一人ひとりの生活や仕事、家庭環境まで含めて考えながら、一緒に続けられる治療を大切にしています。
当院で行うMASLD診療
健康診断で「脂肪肝ですね」と言われても、「どこを受診すればよいのか分からなかった」という患者さんは少なくありません。
実際に外来では、
「様子を見ていました。」
「毎年同じことを言われていました。」
「何をすればよいか分かりませんでした。」
というお話を伺うことがあります。
MASLDは、自覚症状がほとんどないため、受診するきっかけを失いやすい病気です。
だからこそ私は、脂肪肝を「異常値」として診るのではなく、「将来の健康を見直すきっかけ」として診療することを大切にしています。
まずは現在の肝臓の状態を正しく評価します
初診では、
- 健康診断の結果
- 血液検査
- これまでの体重変化
- 飲酒習慣
- 糖尿病、高血圧、脂質異常症などの有無
を確認し、脂肪肝以外の病気が隠れていないかも含めて評価します。
必要に応じて腹部超音波検査を行い、肝臓だけでなく胆のうや膵臓など腹部全体も確認します。
一人ひとりに合った治療方針を一緒に考えます
MASLDと一言で言っても、病状や生活環境は患者さんによって大きく異なります。
そのため、
- まず減量を目標にする方
- 糖尿病の治療を優先する方
- 飲酒習慣の見直しが必要な方
- 定期的な経過観察で十分な方
など、治療方針は一人ひとり異なります。
画一的な治療ではなく、その方の生活や仕事、家庭環境も考えながら、一緒に続けられる方法を考えていきます。
管理栄養士と連携し、生活改善をサポートします
生活習慣を変えることは、決して簡単ではありません。
だからこそ当院では、必要に応じて管理栄養士による栄養指導をご案内しています。
医師が病気を診て、管理栄養士が生活を支える。
それぞれの専門性を生かしながら、患者さんが無理なく生活習慣を改善できるようお手伝いしています。
医師が病気を診て、管理栄養士が生活を支える。
この両方がそろって初めて、長く続けられる治療になると私は考えています。
定期的に経過を確認し、必要以上の検査や治療は行いません
MASLDと診断されたからといって、すべての方に頻繁な検査や薬物治療が必要になるわけではありません。
一方で、肝線維化が進行する可能性がある方では、定期的な血液検査や腹部超音波検査などを行いながら経過を確認していきます。
その時々の病状に応じて、本当に必要な検査や治療を選択することが大切だと考えています。
私が診療で最も大切にしていること
私が目指しているのは、「脂肪肝を治すこと」だけではありません。
患者さん一人ひとりが、自分の体の状態を理解し、将来の健康について一緒に考えられる診療です。
MASLDは、生活習慣病を見直す大切なサインでもあります。
健康診断で脂肪肝を指摘されたときは、「まだ症状がないから大丈夫」と考えるのではなく、「今なら改善できる時期」と前向きに受け止めていただきたいと思います。
私たちは、肝臓だけではなく、生活習慣病も含めた全身の健康を一緒に考えながら、10年後、20年後も元気に過ごしていただくための診療を大切にしています。
このような方はご相談ください
MASLDは、自覚症状がほとんどない病気です。
そのため、「症状がないから様子を見よう」と考えてしまう方も少なくありません。
しかし、健康診断で脂肪肝や肝機能異常を指摘されたことは、ご自身の健康を見直す良いきっかけでもあります。
次のような方は、一度ご相談ください。
- 健康診断で「脂肪肝」と言われた
- ASTやALT、γ-GTPの上昇を指摘された
- 「肝機能が少し高いですね」と毎年言われている
- 糖尿病、高血圧、脂質異常症で治療を受けている
- 最近、体重が増えてきた
- お酒はあまり飲まないのに脂肪肝と言われた
- 家族に肝疾患や生活習慣病の方がいる
- 一度、自分の肝臓の状態をきちんと調べておきたい
「様子を見ましょう」と言われた方もご相談ください
外来では、
「様子を見てくださいと言われました。」
「薬はないと言われました。」
「体重を減らしてくださいと言われただけでした。」
という患者さんも多く来院されます。
もちろん、生活習慣の改善はMASLD治療の基本です。
しかし、その前に現在の肝臓の状態を正しく評価し、肝線維化が進んでいないか、生活習慣病をどのように管理していくかを整理することも大切です。
私が診療で最も大切にしていること
私が診療で大切にしているのは、健康診断の異常を指摘することではありません。
その結果をきっかけに、
「これから10年後、20年後も健康に過ごすためには、何をすればよいのか。」
を患者さんと一緒に考えることです。
脂肪肝は、生活習慣を見直すことで改善が期待できる病気です。
健康診断で脂肪肝を指摘されたときは、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. MASLDと脂肪肝は同じ病気ですか?
脂肪肝とは、肝臓に脂肪がたまっている状態を表す言葉です。
MASLDは、その中でも肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症などの代謝異常を背景とした脂肪肝を指します。
現在では、健康診断で「脂肪肝」と言われた方の多くがMASLDに該当すると考えられています。
Q2. 以前はNAFLDと言われました。MASLDとは何が違うのですか?
病気そのものが変わったわけではありません。
研究が進み、脂肪肝の背景にある代謝異常をより重視する考え方へ変わったため、NAFLDからMASLDへ名称が変更されました。
以前NAFLDと診断された方の多くは、現在ではMASLDとして説明されます。
Q3. MASLDとMASHは何が違うのですか?
MASLDは、代謝異常を背景とした脂肪肝全体を表す病名です。
その中でも、肝臓に炎症が起こり、肝線維化が進みやすい状態をMASHと呼びます。
MASLDだからといって、すべての方がMASHというわけではありません。
私たち肝臓専門医は、MASHという病名だけではなく、肝線維化が進んでいないかを重視して診療しています。
Q4. MASLDは治りますか?
MASLDは、早い段階で生活習慣を見直すことで改善が期待できる病気です。
体重管理や食事、運動、糖尿病や高血圧などの治療を続けることで、脂肪肝や肝機能の改善が期待できます。
私が大切にしているのは、「治る・治らない」だけではなく、将来の肝硬変や肝細胞がん、心筋梗塞や脳卒中のリスクを減らすことです。
Q5. お酒をほとんど飲まないのに脂肪肝になるのですか?
はい、なります。
MASLDは、お酒が主な原因ではなく、肥満や糖尿病、高血圧、脂質異常症などの代謝異常が背景となる病気です。
そのため、お酒をほとんど飲まない方でも発症することがあります。
Q6. 肝機能の数値が少し高いだけでも受診した方がよいですか?
健康診断でASTやALT、γ-GTPの上昇を指摘された場合は、一度ご相談いただくことをお勧めします。
必ずしもMASLDとは限らず、B型肝炎やC型肝炎、自己免疫性肝炎など、他の病気が隠れていることもあります。
まずは原因を確認し、そのうえで必要な治療や経過観察を考えることが大切です。
Q7. MASLDになると肝硬変や肝がんになりますか?
MASLDと診断されたすべての方が肝硬変や肝細胞がんへ進行するわけではありません。
一方で、一部の方では慢性的な炎症によって肝線維化が進行し、長い年月をかけて肝硬変や肝細胞がんへ進むことがあります。
そのため、現在の肝臓の状態を一度評価しておくことが重要です。
Q8. 何kgくらい減量すればよいですか?
一般的には、現在の体重から3〜5%程度の減量で脂肪肝の改善が期待されます。
さらに7〜10%程度の減量では、肝臓の炎症や線維化の改善も期待できると報告されています。
ただし、短期間で大きく減量する必要はありません。
無理なく続けられる生活習慣を身につけることが何より大切です。
Q9. 食事では何に気を付ければよいですか?
「これを食べてはいけません」という食品は基本的にはありません。
大切なのは、
- 食べ過ぎを避けること
- バランスのよい食事を心がけること
- 甘い飲み物や間食を減らすこと
- 続けられる食生活を考えること
です。
必要に応じて、当院では管理栄養士による栄養指導もご案内しています。
Q10. 運動はどのくらい必要ですか?
激しい運動を始める必要はありません。
まずは、
- 毎日歩く時間を増やす
- 階段を使う
- 自宅でできる筋力トレーニングを取り入れる
など、今の生活の中で続けられる運動から始めることが大切です。
Q11. 薬で治りますか?
現在のMASLD治療の基本は、生活習慣の改善です。
一方で、糖尿病や肥満症の治療薬がMASLDやMASHにも有効であることが分かってきており、病状によっては薬物療法を検討することがあります。
薬が必要かどうかは、肝線維化の程度や合併症などを総合的に評価して判断します。
Q12. どのタイミングで専門医を受診すればよいですか?
健康診断で脂肪肝や肝機能異常を指摘された時点が、一度相談するよいタイミングです。
症状がないからといって放置する必要はありません。
現在の肝臓の状態を確認し、生活習慣病も含めた将来の健康について一緒に考えることが、MASLD診療では何より大切だと考えています。
まとめ
健康診断で「脂肪肝ですね」と言われると、なんとなく不安になる方は少なくありません。
しかし、MASLDと診断されたからといって、すべての方が肝硬変や肝細胞がんへ進行するわけではありません。
一方で、自覚症状がないまま病気が少しずつ進行する方がいることも事実です。
だからこそ大切なのは、「怖がること」ではなく、「現在の肝臓の状態を正しく知ること」です。
私が診療で最も重視しているのは、脂肪肝という病名そのものではありません。
その背景にある生活習慣や生活習慣病を一緒に見直し、肝線維化が進んでいないかを評価し、10年後、20年後の健康を守ることです。
脂肪肝は、体が「今の生活を少し見直してみませんか」と教えてくれているサインなのかもしれません。
健康診断で脂肪肝や肝機能異常を指摘されたときは、「まだ症状がないから大丈夫」と考えるのではなく、「今ならまだ改善できる時期」と前向きに受け止めていただきたいと思います。
当院では、肝臓だけではなく、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病も含めて総合的に評価し、一人ひとりに合った診療をご提案しています。
「このままで大丈夫だろうか。」
「一度きちんと調べてみたい。」
そう感じたときは、お気軽にご相談ください。
脂肪肝は肝臓だけの病気ではありません。
生活習慣病を一緒に診ることで、将来の肝疾患だけでなく、心筋梗塞や脳卒中などのリスクも含めて健康を守ることが、私たちが目指している診療です。
健康診断で脂肪肝を指摘された方へ
脂肪肝は、自覚症状がほとんどないまま進行することがあります。
健康診断で脂肪肝や肝機能異常を指摘された方は、一度ご自身の肝臓の状態を確認してみませんか。
