「異常なしと言われたのに、なぜ数年後に大腸がんが見つかるのか?」その理由を、実際の内視鏡画像で解説します。
「以前の検査で異常なしと言われたが不安が残っている方」や「大腸がんの見逃しが心配な方」に向けて、実際の症例をもとに解説します。
大腸カメラで「異常なし」と言われても、数年後にがんが見つかるケースが稀にあります。その原因の一つが、通常の内視鏡では見分けがつきにくい「平坦で透明なポリープ」の見逃しです。
1観察の難所「横行結腸」で見つけたわずかな違和感
先日、大腸のなかでもヒダが鋭角で死角ができやすい「横行結腸」において、オリンパスの内視鏡画像診断支援システム「EndoBRAIN-EYE」が「正常」と判断するような、ごくわずかな変化に遭遇しました。
一見すると異常のない粘膜です。しかし、その場所に付着した「不自然な粘液(Mucus cap)」が、私には強い違和感として映りました。
2見逃されやすい「がんの芽」SSA/Pとは
このような所見の裏には、SSA/P(無茎性鋸歯状病変)と呼ばれるポリープが隠れていることがあります。
SSA/Pは、遺伝子のスイッチが切り替わる「異常メチル化(CIMP)」を背景に、がんへと進行する性質を持っています。
👉 通常のポリープとは違うルートで、気づかれないまま進行する可能性がある病変です。
いわゆる「De novo(デノボ)がん」のように、突然現れる進行がんの中には、こうした見つけにくい病変が静かに成長していたケースが含まれていると考えられています。
3拡大内視鏡で正体を確認し、その場で切除
違和感を確認するため、スコープを寄せ、拡大内視鏡(NBI観察)で詳細に観察しました。雲のようにぼやけた表面構造(Cloud-like surface)や、腺管の出口が大きく開いた所見(Type II-open pit pattern)を確認し、その場で身体に負担の少ないCSP(コールドスネアポリペクトミー)で切除しました。
病理結果は、やはりSSA/Pでした。もしこの時、「ただの汚れだろう」と判断していれば、数年後に進行がんとして見つかっていた可能性も否定できません。

通常光での観察
平坦で周囲の粘膜と色が似ており、EndoBRAIN-EYEも「正常」と判断しました。わずかな粘液の付着が唯一のサインです。

拡大内視鏡(NBI観察)
100倍に拡大した所見。SSA/Pに特有の「開Ⅱ型ピットパターン(腺管の出口の広がり)」を明瞭に確認できます。
4AIだけでは拾えない「違和感」を拾うために
現在、内視鏡の分野でもAIは非常に有用なツールです。当院でもオリンパスの「EndoBRAIN-EYE」を活用しています。しかし、AIはあくまで「典型的なパターン」に基づいて判断します。今回のような「境界線上にある微細な違和感」を拾い上げるのは、医師の経験と集中力です。AIと専門医の判断を組み合わせることで、見逃しを限りなく減らすことが可能になります。
5当院が大切にしていること
大腸がんを予防するうえで最も重要なのは、「見つけにくい病変を見逃さないこと」です。そのために当院では、以下の体制にこだわっています。
- 時間帯予約制による十分な観察時間の確保
- 拡大内視鏡・NBI観察の積極的活用
- EndoBRAIN-EYEと専門医の判断を組み合わせた精緻な診断
6最後に
大腸カメラは、「受けること」だけで安心できる検査ではありません。どのように観察されるかによって、その価値は大きく変わります。見逃されやすいポリープを確実に見つけ、将来のがんを未然に防ぐために。当院では、一つ一つの違和感を大切にした内視鏡検査を行っています。
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当院で実際に行った大腸ポリープ切除の実績と、安全への取り組みについてまとめています。
👉 “見逃されにくい検査”を受けることが、将来の大腸がん予防につながります。
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